就職活動を始める前に戻りたい

やりなおせるなら、やりなおしたけれど、実際にもう一度・・・となると二の足を踏むのが学生時代の就職活動。とりわけ面接では失敗を重ね、いくつもの会社に、「今回はご縁がございませんでした」と選考に落ちた旨を告げられたものです。そのたびに、自分の何がいけないのかと深く考えました。どこの起業にも求められず、世の中に受け入れらない、ダメな人間なのかとすら思いました。

こちらにもよくないところが多々ありました。深夜まで痛飲し二日酔いのまま面接に臨んだのは論外だとしても、想定問答集にあるような質問にさえ、まともに答えられないことも一度や二度ではありませんでした。

あなたのセールスポイントを教えてください。
自己アピールの格好の機会なのに、
(売るのは時間と労働。自由を奪われるかわりに給料という対価を得るだけのこと)
などど斜に構えた考え方をしていたのですが、さすがにそんなことを言ってはいけないというくらいの分別はありましたから、
「学生時代に培った語学力です」
などとありきたりの受け答えをしました。
「わが社に入ったとして、どのような仕事をしたいですか?」
下調べもそこそこに面接を受けていましたから、
「モノづくりです」
「どのような製品を作りたいのですか?」
「一般に広く受け入れられるような商品です」
「それは具体的にはどういうものですか?」
「・・・・・・」

これでは落とされるのも仕方ないでしょう。

グループでの面接も苦手でした。他の応募者が将来自分がどのような仕事をしたいか、そのためにはこんなスキルを身につけてきた、是非とも御社のお役に立ちたいので・・・という話を情熱こめて話すのを横で聞きながら、 (こないだまでさんざん遊んでて、まだ遊び足りないようなことを言っていたのに、この切り替えの早さはなんなんだ) とビックリし、 (おまえ、大学ではそんなに真面目なヤツではなかっただろう。いつからそんなにいいコになったんだ) とも思い、 (オレはそんなふうにはなりたくない。オレはオレのままでいくのだ) と、ひねくれた態度でしたから、グループ面接では熱っぽく語るなどとは無縁です。 「あなた、クールですね。老成しているというか・・・」 と面接官に評されたものです。要するに、若さと元気がなかったわけで、そんな人物を企業は求めません。ウソでもいいから、元気でガッツのある人物のほうが会社に入ってから働きます。

そんなわけで就職活動には苦労しました。数十社に落とされ続け、ようやく今の会社に拾ってもらいました。 もう一度やりなおせるとしたら、そんなにシラけたことでどうする!と当時の自分を張り倒し、根性見せたらんかい!と後ろから蹴飛ばすでしょう。 見え透いたウソなどすぐにバレます。「御社のために全力を尽くします」なんて、挨拶がわりです。面接官は一日に何回も何十回も同じことを聞かされて耳にタコができています。挨拶がわりなのですから、言えばいいのです。そこに変なプライドは必要ありません。 あとは本音で語って結構。正直に本当の自分を見せればいい。面接官の心証など二の次です。

ただし、それも、自分が何をしたいのか、自分がどういう資質で、何を志向しているのか、得意なことは何で、苦手としていることは何かを見極めた上での話です。 そうすればどんな質問に対しても、しっかりと自分を打ち出せたはずです。

もし、就職活動をやりなおせるのだとしたら、就職活動を始める前に戻してほしい。始める前に自分が何者であるのかを突き詰めて考える作業からやり直したい。その結果はきっと就職活動の質に反映されるはず。落とされても、門前払いをくらっても、自分というものをしっかり持ち続けていられたなら、次の面接、次の訪問、次へ次へと進んでいって、きっと納得のいく就職先がみつかるはずです